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山口賢一氏がが語る       「考えるボクシング」       拳の先にある、知略と創造の闘い

  • 執筆者の写真: Toshihiro Yamanaka
    Toshihiro Yamanaka
  • 5月6日
  • 読了時間: 3分

私のボクシングの師は、大阪天神ジムの会長である山口賢一会長です。

ボクシングという競技に「頭脳」のイメージを重ねる方は、まだ少ないかもしれません。

しかし、山口賢一会長の理論をお聞きすれば、そのような固定観念は一蹴されます。

会長のボクシングは、筋力や反射神経だけで語れるものではありません。

そこにあるのは、思考の格闘です。まるで将棋のように、読み合いと駆け引きが幾重にも重なった「知の戦争」と呼ぶべきものです。


📌① 将棋理論──拳は読むものであり、ただ打つものではありません

山口会長がまず強調されるのが、「将棋理論」です。「ただ打ちたいからパンチを出すのは、素人のやること」――そうおっしゃいます。相手がどのように防御し、どこで反撃してくるのか。その“先”を読み、さらにその先まで思考を巡らせることが重要なのです。

たとえば、ジャブで相手の視線と意識を上段に向けさせ、その瞬間にボディへフックを入れる。さらに誘導した後は、虚を突くストレートでノーガードの顎を狙う――。

これはもはやパンチの応酬ではありません。精密に構築された一手一手の“戦略”であると言えます。


📌② 振り子理論──「止まっている的は、狙われやすい」

次に挙げられるのが「振り子理論」です。これは山口会長の試合運びにも色濃く表れています。「揺れているものは、当てにくい」――この言葉に理論が集約されています。

ボクサーの頭部は、まさに“的”です。そこを的確に打ち抜かれてしまえば試合は終わります。であれば、それを止めなければよいのです。振り子のように頭をリズムよく左右に揺らすことで、相手の狙いを外し続けます。

この動きは守りだけに留まりません。リズムの中で生まれる“タイミングのズレ”が、逆に自分の攻撃をヒットさせるための武器となるのです。


📌③ 虚を持って実を打つ理論──情報戦を制する「第一撃」

最後に紹介するのは、「虚を持って実を打つ」理論です。初対面の相手には情報がありません。だからこそ、優位に立つことができます。山口会長の理論では、初回のラウンドは“印象戦”と捉えています。

「この選手、何をしてくるか分からない」――そう相手に思わせた時点で、こちらが主導権を握ることができます。予想外の変則パンチや緩急、フェイントを織り交ぜて相手を混乱させます。相手が迷えば、反応は遅れます。その“間”に本命のパンチを打ち込みます。

この構図こそ、“虚”の中に“実”を隠す戦略的な攻撃なのです。


💡山口ボクシングの核心──知略、創造、そして自己理解

山口会長の理論は、単なる技術論にとどまりません。それは「己を知り、相手を知る」という哲学です。試合は内面の反映であり、トレーニングは自己との対話でもあります。拳の先には、単なる勝敗以上の意味が込められています。そこには知恵と創造、そして美学すら感じさせるものがあります。

それこそが、山口賢一会長が体現される“将棋のようなボクシング”なのです。



 
 
 

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