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井上尚弥 vs ラモン・カルデナス戦 に寄せて ~今後への願い~

  • 執筆者の写真: Toshihiro Yamanaka
    Toshihiro Yamanaka
  • 5月5日
  • 読了時間: 3分

4階級制覇王者・井上尚弥選手(大橋)と、アメリカのラモン・カルデナス選手との一戦を見て、まずはラモン・カルデナス選手の健闘を称えたいと思います。

これまで数多くの世界ランカーや王者たちが挑んできた中でも、カルデナス選手は井上選手に対して最も効果的な戦術を展開した選手の一人だったと感じました。

私は彼を「井上尚弥選手と対戦した相手の中でベスト」と評しても差し支えないと考えています。


特に評価すべきは、試合中盤で奪った左フックによるダウンの場面だけではありません。

むしろ最も印象的だったのは、井上選手にとって得意とされる中間距離での攻撃を封じ込めた点にあります。

井上選手の左はジャブであっても圧力が強く、時に左ストレートとして鋭く突き刺さりますが、カルデナス選手はそれを丁寧にブロッキングしながら、間合いを潰して接近戦に持ち込みました。

そしてその近距離では、フックやアッパーを有効に使い、単なる防御ではない、積極的な応戦を見せました。この戦法は、今後井上選手に挑もうとする選手たちにとって一つのヒントになるのではないでしょうか。


一方で、井上選手のコンディションについても少々気になる点がありました。

パンチにやや力みが見られ、彼の代名詞ともいえる左フックのヒット数が少なかったように感じました。

右アッパーも良いタイミングで放たれてはいたものの、軌道がやや遠回りで、これまでのような鋭さを欠いていた印象です。


その背景には、もしかすると次戦以降を見据えたフェザー級転向への準備があるのかもしれません。

実際、上半身の筋肉量が増しているようにも見受けられました。

特に上半身の三角筋がかなり発達しており、これによってフックやストレートに「押し込むような強さ」が出ているのは確かですが、その反面、パンチの軌道がやや狭まり、これまで井上選手の武器であった「当て感」に少なからず影響を及ぼしているようにも見受けられました。


その対策として私が推奨したいのは、「初動負荷トレーニング」の導入です。

このトレーニングは、今回の試合で解説を務められた村田諒太さんが、現役時代を通じてアマチュアからプロまで継続して取り入れていた方法でもあります。

また、元帝拳ジム所属で、ライト級でロマチェンコ選手、ロペス選手、ベルデホ選手と敵地アメリカで堂々と戦った中谷正義さんも取り入れていたことで知られています。


この初動負荷トレーニングは、肩甲骨周辺の可動域を広げると同時に、股関節や骨盤周辺の柔軟性を高める効果があります。

その結果、しなやかで正確な軌道のパンチを繰り出すための「神経・骨格・筋肉」が連動した状態を育てることが可能になります。

筋力に頼るのではなく、動きの質を高めるという意味で、井上選手のスタイルに非常に合った補完的なトレーニングと言えるのではないでしょうか。


井上尚弥選手のキャリアは、これからの2~3年が総仕上げの期間となるでしょう。

中谷潤人選手をはじめとする実力者や、フェザー級の王者たちとの大一番に備え、あの“研ぎ澄まされたカミソリ”のような鋭いパンチとコンビネーションを、さらに磨き上げてほしいと願っています。


そして何よりも、これ以上ダメージを蓄積することなく、無傷のまま現役生活を送っていただきたいという想いを、心から抱いております。



 
 
 

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